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【WD限定ノベル】茶円アキラ 2026.03.14  【WD限定ノベル】茶円アキラ

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 友チョコを贈る男子、というのは、ちょこちょこと市民権を得てきてはいるものの、まだ一般的とは言えないらしい。

 なので、最初にプレゼントすると、相手からは大体
「え、くれるん?」
 と、ビックリした反応をされる。

 友チョコ男子をやらせてもらってそろそろ長いから、この手の反応は慣れっこだ。

「いつもお世話んなっとるし、感謝のチョコぐらい贈ってもええやんな? 減るもんちゃうし」
「財布の中身は減るんとちゃう?」
「友チョコの輪は広がるやん」

 そんなやりとりもすっかり定番で、そろそろ大阪の友人知人が俺からのチョコに慣れてきていただけに、シュウとユウヤの反応は新鮮だった。

 シュウはちょっと驚きはあったものの、すんなりと受け取ってくれたようだった。流石に動じない性格をしている。
 一方のユウヤは、最初のうちは足下でキュウリを見た猫のようにパニックを起こしていたが、それも、時が経てば収まった。

 二人へのプレゼントを用意するのは、楽しかった。
 同じチョコボックスのセットを選んだ上で、それぞれが好きそうな味のチョコレートを詰めた。

 甘いのも苦いのもいけるシュウには、意外性を楽しめるよう、色んな種類のチョコレートを。
 好き嫌いの多いユウヤは、変化を少なめに、安定して美味しく味わえるようなチョコレートを。

 誰かのために何かを考える時間は、俺にとって一番贅沢で、楽しいひとときだった。

 正直、人のためにわざわざやっている、とか、慈善事業、とかいう感覚は、あまりない。

 プレゼントをもらってくれた相手の反応を考えて、ワクワクするのが好きだ。
 俺が嬉しくて、楽しいから、やってるだけ。

 感謝を伝えて、プレゼントを贈る。
 それを受け取ってもらえることが、本当に嬉しくて、幸せだった。

 バレンタインが終わってから、折に触れて、シュウのホワイトデーの相談に乗るようになった。男家族に贈り物をするのは初めてというシュウは、色々試行錯誤を繰り返しながらも、ホワイトデーの準備を楽しんでいるように見えた。
 一方のユウヤといえば、しばらくの間様子がおかしかったが、徐々に調子を取り戻し、数日の間、以前より墨の濃いハガキを送ってくれた。謎の気合いが入っているのは伝わってきて、ちょっと微笑ましい気持ちになった。

 そして二人とも、俺に何かを隠そうとしながら、好みのスイーツを探ってこようとしているのが分かった。

 人付き合いがあまり多くないせいなのか、二人ともあまり腹芸はうまくないらしい。
 ユウヤはお茶請けの話から外堀を埋めるようにスイーツの話題を振ってくることが増えたし、シュウに至っては直球で「食えない菓子とかあるか」と聞いてきた。

 ほぼ間違いなく、俺にお返しを用意してくれようとしている。
(……二人とも、えぇやっちゃな……)
 そう考えると、自然とにやけてきた。

 そんなこんなで日を送るうち、次の輪読会の日が近付いてきた。

 カレンダーを見て、思わず
「あ」
 と声が出た。

 輪読会の日が、ちょうど、ホワイトデーと重なっている。

(おぉ……これは、どないしよっかな)
 ちょっとだけ、考えをめぐらせた。

 ギフトを贈るのは好きだ。
 だけど、バレンタインデーとホワイトデー。両日ともプレゼントを贈るのは、ちょっと過度な気がした。
 多すぎるプレゼントは相手にプレッシャーを与えて、時には支配構図を作ってしまうという話もある。
 それはちょっと、不健全だ。

 だけど、シュウもユウヤも、ほぼ間違いなく、バレンタインの返礼を携えて、俺を待ち受けている。

 そうなったとき、自分だけ手ぶらというのも決まり悪い。

(けど、これで強めのギフト返したらお返しのお返しが終わらんなるし……ほんでも手ぶらは悪いし……)

 ちょうど良いバランス。
 ギフトではないけど、その場にちょっと華やぎを添えるような、絶妙のプレゼントがほしい。

(どないしよっかなぁ……)

 同じ言葉を脳内でぐるぐると繰り返しながら、仕事終わりに、近所の百貨店に寄ってみる。

 ホワイトデーの催事場は、可愛らしい春色に満ちていた。
 春スイーツとホワイトデーのコンボで、スイーツを売っているらしい。

(……輪読会のおしゃべりしながら、軽くつまめるやつとか、ええよなぁ)
 そんなことを考えながら、サクラ色いっぱいのスイーツを眺める。

 この季節の催事場は好きだ。
 普段の街ではなかなかお目にかかれないスイーツが、所狭しと並んでいる。
 色んな人のワクワクとキラキラが詰まっていて、自然と胸が躍る。
 催事場に来る人たちの雰囲気も、どこか幸せに満ちている。

 だけど今日は、いつも以上に、なんだかワクワクが止まらない。

(……あぁ、そっか。俺、ほんまに嬉しいんやなぁ)

 遅ればせに、そんな感情に気がついた。

 ギフトは、幸せなものだ。
 贈る幸せ、受け取ってもらえる幸せ。ポカポカする感情が、たくさん詰まっている。

 だから、贈るのが好きだった。

 返ってこなくても全然良い。プレゼントを選んで渡すことが、自分の喜びなのだから。

 そんな俺の、我儘みたいなギフトを、シュウもユウヤも、受け止めてくれた。
 そしてきっと、返礼のギフトを用意して、俺に付き合ってくれている。

 友チョコを贈る男子は、きっと多数派ではない。
 男子同士で感謝するのは気恥ずかしいし、そんなの言わなくても伝わるもんだって気持ちも、よく分かる。

(けど……やっぱ、贈り物って、もらうんも嬉しいもんやんな)

 春色の、ロールクッキーを選ぶ。

 口溶けが軽くて、サクサクとつまめるもの。

 気負わせない程度の見た目で、雑談ついでに食べられる気軽さで。

 だけどしっかりと、美味しいもの。
 俺からの感謝が届くもの。

(あぁ、アカン。やっぱり……お礼のお礼、買うてもーてるなぁ)

 少しぐらいの浮かれっぷりは、近付いてきた春の陽気で許してもらおう。

 二人に輪読会で会うのが楽しみで、我知らず、口元に笑みが浮いていた。




著:佐久田 葉

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