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【スカー・エピソード】第1部:朗読劇台本 2026.05.16  【スカー・エピソード】第1部:朗読劇台本

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登場人物
 庵サツキ(サツキ)
 鉄地瓦シュウ(シュウ)
 雪水トウカ(トウカ)
 裏目カナメ(カナメ)
 御稜威ヶ原タケル(タケル)
 キュレーター(キュレ)

=====================================

トウカ あなたの全てを支えたい
サツキ あなたに全てを打ち明けたい
シュウ あなたと全てを分かち合いたい
カナメ あなたに全てを見せてみたい
タケル あなたのために戦いたい

(少し間を置く)

キュレ ……さて、ブックマーカーの皆さん
   本日はお集まりくださりありがとうございます
   どうです?
   「本の世界」には慣れてきました?
サツキ どうって……言われてもね
   こんな物騒なところ、慣れるものじゃないと思うけど
トウカ 僕は……
   キュレーターさんの役に立てるなら、少しずつでも……
   慣れたいな、と、思ってます
タケル 大丈夫かお前、なんか弱みでも握られてんのか?
トウカ いえ、そういうわけじゃ……
   僕は、人の役に立つのが、好きなんです
タケル そりゃ、志はいいけどよ
   助ける相手はよく選べよ?
カナメ まぁまぁ、いいじゃないですか

シュウ ……で
   俺たちを集めた目的は?

キュレ おやおや、いきなり本題ですか
   シュウさんは知りたがりですねぇ
   まぁ、良いでしょう
   皆さんには今回、それぞれのユニットの代表、
   リーダーとしてここに来ていただきました
シュウ 代表……って……
キュレ 他に適任がいるじゃないかと言いたげな顔ですが
   私なりの選出理由があるんですよ
キュレ 今回の目的は皆さんの軽い顔合わせと……
   追加のチュートリアル、とでも言ったところでしょうか
   まぁ、小難しい話の前に……どうぞ皆さん、自己紹介でも
   これからリーダー会議として招集する際は
   皆さんに顔をつきあわせていただくことになるので、
   上手くいけば、長いお付き合いになりますし
タケル 上手くいけば、って……いちいち不穏なんだよなアンタ

タケル まぁいいか。自己紹介だっけか?
   俺は御稜威ヶ原(みいずがはら)タケル
   職業は警察官
   ユニットでは切り込み隊長やってる。よろしくな
カナメ 裏目(うらめ)カナメと申します
   社長秘書のような仕事をしておりまして、
   ユニットでも、サポートを担当しています
   どうぞ、よろしくお願いいたしますね
トウカ 僕は、雪水(ゆきみず)トウカ、大学生です
   硬くて大きい氷の結晶が出せるので
   ユニットでの役割は、防御役……でしょうか
   戦ったりするのは苦手ですけど……よろしくお願いします
シュウ 鉄地瓦(てちがわら)シュウ
   色々作れる
   ……その、よろしく
サツキ (あぁ……こうして自己紹介してると、
    まるで仲間になっていくみたいだ
    誰かが消えたとき、辛い思いをするのは自分なのに……)
カナメ どうかなさいました?
サツキ ……あぁ、ううん。なんでもない
   僕は庵サツキ
   ユニットでの役割は、人を癒やしたり、敵を沈静化させること、かな
   普段は喫茶店でマスターをしてるよ。よろしくね
キュレ 皆さんご協力ありがとうございます
   今後は、お互いをよく覚えておいてくださいね

シュウ で? 追加のチュートリアルって?
キュレ ここにいらっしゃる皆さんは、
   ユニットの中でも比較的細かい点が気になるタイプの方々です
   今日はその疑問を一つ一つ解消していければと

キュレ というわけでさっそく……
   何かご質問はございますか?

シュウ なら……ひとつ、いいか
キュレ どうぞ、シュウさん
シュウ 俺たちがこの世界で使ってる、魔法みてえなパワー……
   アレの、動力源は、何だ?
キュレ 動力源、ですか。エンジニアらしい発想ですねぇ
シュウ ブックマーカーがマシンなら、
   しおりは俺たちとエンジンを繋ぐシャフトに過ぎない
   どこかに別に、エンジンが……動力源がある
   その正体は何だ?

カナメ 失礼、なぜ借り物だと?
   あなたの言葉を借りるなら、しおりがシャフトではなく、
   エンジンだという可能性もあるでしょう?
シュウ 違う。しおりが手元にあるだけじゃ、力が使えなかった
   これ自体にエネルギーはねぇ

サツキ シュウくんの仮説は正しいよ。
   僕たちは「本の世界」に行ってしおりを媒介にすることで……
   ブックマーカーとしての力を発揮しているんだ
カナメ ほう……。なにやらお詳しい様子ですね
サツキ 詳しいってほどじゃ……先にキュレーターから聞いてただけだよ
カナメ そうですか……

シュウ で、答えは?
キュレ えぇ、おっしゃるとおり……みなさんは、そのしおりを媒介に
   「よろずあまねくもの」から力を借りているんですよ

シュウ よろずあま……なんて?
トウカ 「よろずあまねくもの」ですよ。よろず、も、あまねく、も、
   「すべてにわたって」「広く」という意味合いですね
   以前キュレーターさんは
   「『しおり』を通じてよろずあまねくものたちが、
    あなたがたへ力をくれますからね」と
   おっしゃってましたが、そのことですか?
キュレ えぇ。トウカさんは覚えが良くて協力的で本当にありがたいですねぇ
   では、他に質問のある方は

シュウ 待てよ。聞きたいのは名前じゃねえ
   それが何なのか、だ
キュレ おっと……それは失礼しました
   「よろずあまねくもの」は……無数の、名もなき読者ですよ
トウカ 読者……ですか……?
キュレ 本の著者は、世に名を残します
   ですが彼らが名を残せるのは、その本を、無数の名もなき
   誰かが愛したからこそです

キュレ たかが一冊、されど一冊、本を手に取り愛した読者たちの
   思いが……本を世に残し、新たな本を生むきっかけとなる

キュレ 読者こそが、名著を生み、本を世に残す
   ──それがどれほど強力な力か、想像もつかないでしょう
   そうして彼らが読書中に、本へしおりを挟むことで
   その想いの力が、あなたがたにこの世界で、
   彼らの大切な本を、概念を、思い出を……守るための力を授けてくれるんですよ

シュウ ……つまり、世界中で誰かが本を読んで、ページにしおりを挟むと
   それが俺たちの力になる……?
キュレ 本を読む人には当たり前のこと過ぎますからね。その困惑顔も無理ないでしょう

シュウ ……いや
   その力を受け続けたら、仲間にどんな影響が出るのか聞きたかったんだが……
   ……思ってたのとだいぶ違う答えが返ってきて
   何が起きるか想定できなくて
キュレ 悪影響はありませんよ
   あなた方の能力をより強化したり、損傷を修復したりできます
   あと、応援されてるなぁって気持ちで胸がぽかぽかしたりで
   良いことずくめですよ
カナメ 最後急にふわっとしますねぇ

シュウ ……それならいい。
   俺からは以上だ

キュレ では、他に質問のある方どうぞ

トウカ あ、それじゃあ……
   僕からいいですか?
キュレ どうぞ、トウカさん

トウカ 僕たちは、蟲<バグ>と戦うために呼ばれたんですよね
   蟲<バグ>の生態や攻撃の特徴について教えてもらうことは出来ますか?
   事前に知っておけば、キュレーターさんや仲間の役に
   ちゃんと立てるかなと思ったので……
キュレ それは少々……難しい質問ですねぇ

サツキ トウカくん、蟲<バグ>は、同じ種類とは限らないんだよ
トウカ そうなんですか?

サツキ 例えば……君は、どんな蟲<バグ>に遭遇したの?
トウカ 僕は……壁……というか、箱の中に
   閉じ込めて、水に溺れさせようとするタイプの蟲<バグ>でした
サツキ 僕が遭遇したのは、味方に擬態する蟲<バグ>だった
   ……蟲<バグ>も、僕らと同じで、
   どの本を食べたかによって、姿かたちや能力が変わるんだ

カナメ やはりお詳しいですね?
   キュレーターさまから個別指導でも受けてらっしゃいます?
サツキ 僕は何度か戦ってるから少し知ってるだけだよ……。

サツキ キュレーター、何か間違ってることがあったら、訂正してくれる?
キュレ いえいえ、サツキさんのおっしゃるとおりです
   蟲<バグ>は形態も能力も多種多様でして……
   ただ、そのどれもが「本」を食らおうとしていることに変わりはありません
   退治して、本を守ってくださいね
トウカ 分かりました

カナメ つまり、毎回出たとこ勝負というわけですか。
   相性次第では苦戦しそうですね
キュレ 大丈夫ですよ。そのためにユニットを編成しているのですから
   私だって、あなたがたにあっという間に退場されては困りますしね

サツキ ふぅん? 僕らのことは、コマ程度にしか思ってないと感じてたけど
キュレ いえいえ、滅相もない……


キュレ さて、他にご質問は?

カナメ では、私から……
   以前、このしおりの成り立ちについて解説いただいたと
   思うのですが、もう一度、一言一句お伺いすることは可能ですか?

キュレ あぁ、それでしたら……
   『そのしおりは、あなたたちがこれまで読んできた本や抱いてきた願い、
     そして、傷そのものが形をとったものです』と、お伝えしましたね

カナメ ありがとうございます
   では質問なのですが、挙げられた項目は、いずれも変動しうるものに思えます
   そこでこのしおり……つまり、我々の使う能力は、変容するんですか?

キュレ ……なるほど、面白い質問ですね
   結論から入ると、答えはイエスです
   ですが、よほどのことがあったときぐらいです
   人が劇的に変わる出来事なんて、そうそうありませんから
カナメ ……ありがとうございます
   納得しました

キュレ おや、もうよろしいんですか? てっきり根掘り葉掘り問われるかと
カナメ いえいえ。庵(いおり)さまはともかく、
   まだ私たちは、その段階にありませんよ


カナメ ……あなたも随分底意地が悪い
   まだ何が分からないかも分からないような初心者を集めて、質疑形式で
   チュートリアルを行うなんて無茶をなさる
   あなたのことですからうっかりはあり得ない。何らかの作為を感じてしまいます
キュレ 考えすぎですよ、カナメさん
カナメ すみません
   どうにも人を疑ってしまうタチでして……

カナメ ……疑ってしまう、といえば……
   御稜威ヶ原(みいずがはら)さま。随分お静かですね?
   てっきり、あなたは積極的に質問するタイプかと思ったんですが
タケル ん……あぁ。
   考え事してた
キュレ 何を、お考えで?
タケル アンタも知りたがりだな。シュウのこと言えねえっての……

タケル 別に大したことじゃねえよ
   キュレーターは、俺たちをリーダーに選んだっつってた
   けど、俺のユニットは二人編成だ。陣頭指揮が必要な人数でもねぇ
   ……参考に聞くが、お前らのユニット、それぞれ人数は?
サツキ うちは三人で一チームだよ
シュウ 俺のとこも、三だ
トウカ 僕は二人です
カナメ 私も、二名ですね
タケル だよな。やっぱ規模は変わらねえ
   って考えると、キュレーターが「リーダー」を指名してんのが違和感あるんだよ
   話聞いて伝書鳩するだけなら、キュレーターがわざわざ選抜しねぇでも
   ユニットで暇なやつが来ればいい
   じゃあ何で今回は指名した? ってな。

タケル で、さっきの自己紹介で最初に名乗って型を作って、
   全員のユニットの役割を確認した
   そしたらここにいる連中、攻撃、防御、サポート、ヒール、特殊スキル……
   綺麗に揃ってて、編成のバランスがいいんだよ

タケル ってことはキュレーターは、今回試験的に、俺たちに少し大きめの
   ユニットを組ませようとしたんじゃねぇか……って、見当がつく

タケル だったら、今から組まされる相手がどういう連中なのか観察した方が
   いいな……と思って、誰が何聞いてどんな風に考えてんのか、よく聞いてた

タケル サツキさんは経験者だが目立ちたくはねぇ。
   でも親切で、自分に多少不利になっても、困ってるやつを放っておけない
   シュウは理詰めで考える癖があるが、根っこのところは仲間思い
   トウカは役に立とうと頑張るタイプで、細々と気を回してよく人の話を聞いてる
   で……カナメさん、アンタは一番食えねえ

タケル ってコトが分かって、じゃあ次に何かが起きるとしたら……
   キュレーターのことだ
   実戦形式でいきなり蟲<バグ>との戦闘に俺らを突っ込む可能性がある

タケル だったら真っ先に動けるように待機しとくか
   って、考えて、鍔に手ェかけて、前傾気味の姿勢で椅子に座ってるとこ

カナメ ……意外でした。案外切れるんですね
タケル 意外も案外も余計だっての

キュレ やれやれ、そう勘ぐられると、やりづらくて仕方ありませんねぇ……
   私は皆さんの案内人ですよ? 敵じゃありません
タケル だが今日、戦わせる予定はあった。だろ?
キュレ 私はただ……
   皆さんに、何のために戦うのか、思い出していただこうと思っただけです
   なので今日、ちょっとしたものを、ご用意していました

タケル あ?

キュレ さぁ、どうぞ、行ってらっしゃい
サツキ うわっ!?
シュウ サツキさん! うっ、うわああ!!
トウカ 二人とも……っ、わ、わぁあああ!!
カナメ くっ……これは……っ、また、吹き飛ばされる……っ!
タケル キュレーターっ、てめぇ、覚えてやがれぇえ!


 【以下、第1部独自パート】


サツキ ここ……は……洞窟の……沼に、落ちたのか……?
タケル ぷっは……!! あの野郎何が! 何が案内人だ!
   やることどう見ても敵じゃねえか!!!
カナメ あなたさっきまでの深慮ぶりから一変しすぎじゃありませんか
タケル やかましい!

シュウ ……蟲<バグ>は……いねぇみてえだな
トウカ ここから、脱出することが今回の課題……なんでしょうか?
タケル オメェらはすぐ順応しすぎなんだよ
サツキ まぁまぁ……キュレーターのことだから、さっきのタケルくんの
   推察が当たってるなら、僕らに一時的に組ませるって
   もくろみが上手く行くかどうかどこかで観察してるはずだ
カナメ まったく、本当に退屈しない……

トウカ ……あれ
シュウ どうした?
トウカ ……おとう、さん、おかあさん? なんで、ここに……
タケル トウカ?

トウカ ッ、待って! 待って!! お父さん! お母さん……!!
   なんでっ……僕を、僕を置いて、行かないで……!!

サツキ これは……侵蝕され始めてる?
タケル キュレーターのやつ、俺たちに戦う理由を思い出せるとか言ってたよな
   それが、俺たちの傷を見せつけるって意味だとしたら……!
サツキ このままじゃ暴走する!早く沈静化しないと……!

サツキ みんな下がって、力を使うから!
トウカ あぁ……ッ! ごめんなさい、ごめんなさい!
   僕が、役立たずだったから、いらない子だったから……!
   お願いします、いい子にします!
   だから、お願い……僕を必要だって、言ってください……!
   僕だけ置いて、いかないで……!!
サツキ トウカくん、落ち着いて……
   しっかりするんだ、このままじゃ沼に沈んじゃうよ!
タケル サツキ、急げ! シュウも飲まれ始めた!
サツキ えっ!?

シュウ どうせ誰にも、何も、伝わらない

   俺が何かを考えたせいで
   俺が何かを作ったせいで
   全部がめちゃくちゃになる

   それなら一人で生きていく方が、ずっといい

タケル シュウ! おいしっかりしろ! 立て! おい!!!
シュウ 触んな!
タケル あぁクソ!
   ダメだこれ、ラチがあかねえ! 二人とも、幻覚でも見てんのか!?
サツキ これじゃチームアップどころの騒ぎじゃない……!

カナメ ……どうでしょう? いっそ飲まれてしまうというのは
タケル 何言ってんだテメェ!?

カナメ 思いのままに狂ってしまった方が、ずっと楽しいじゃありませんか
こんな場で平静を取り繕うなんて退屈を選ぶなんて、とんだお笑いぐさです!
   そうでしょう?
   あはっ、あはははは!!
タケル お前も飲まれてんじゃねえか!!
サツキ この人ホントにタチ悪いね!?

サツキ 原因がこの沼だとしたら、早く上がらないと……

タケル トウカだ! 氷の結晶で防御ができるっつってた!
それで一時的に、陸地を作らせるんだ!
サツキ 分かった!

サツキ ブックマーク・ページド! 癒本(ゆほん)!

トウカ(モノローグ) 家族は、僕を必要としなかった
   楽しいお出かけのとき、僕だけが置いて行かれた
   この家に居場所はなくて 誰も僕を必要としていなくて
   だったら、せめて、他の誰かに、必要とされたくて……
   僕は、人の役に立てる人になりたくて……

   じゃないと僕のいる意味が……価値が……どこにも……

サツキ ……トウカくん 僕の声が聞こえる?
トウカ その声は……サツキさん?
サツキ 君の力が今、必要なんだ
   君の能力で、この沼から僕たちを助けてほしい。できるね?
トウカ はい!
   ……だから、僕を……、僕を……必要と、してください

トウカ ブックマーク・ページド 雪囲(ゆきがこ)い

サツキ よし、沼の上に氷の板ができた! さぁ、早く上がって!
トウカ 僕、役に立てました?
サツキ 役に立ったね! いい子! 偉いよ!
トウカ はい!
タケル 雑だな!?

カナメ どうしてわざわざ安寧を選ぶんです?
   そんな退屈な人生を、選び取る価値が分かりません
タケル お前はごちゃごちゃ言ってねえで上がれっての!
サツキ よし、これで四人……あとは、シュウくんか
   あの体格で腕を振り払われちゃ沼から引き上げるのは難しそうだね……

タケル カナメ、アンタサポートがどうとか言ってたな
   何とかならねぇのか
カナメ 出来ないこともありませんよ
   私の力を使って庵(いおり)さまの能力を強めれば、
   この距離でも十分、鉄地瓦(てちがわら)さまを助けられるかと
タケル だったら……
カナメ ですが、まだです
タケル は?
カナメ まだ、庵(いおり)さまと御稜威ヶ原(みいずがはら)さまの
   傷を拝見しておりません
   私が動くのは、それからでも遅くないでしょう?

タケル お前ッ……! お前なんっ……!?
サツキさん、早くコイツ沈静化してくれよ!
サツキ 無理だよ! 信じられないけど……彼は正気で、こう言ってる!
タケル はァ……!?

サツキ 話してもどうにかなりそうにないね
カナメ はは、どうもすみません
タケル この野郎……

タケル 仕方ねえ、シュウは俺が引きずってくる
サツキ わかった
タケル おら、帰んぞ、シュウ!
シュウ 離せ、触んな……!

シュウ 誰かに分かってもらおうなんて
   都合いい夢みたのが、全部……間違いだった!
タケル ごちゃごちゃうるせぇ! いいから、こっちに、来い、っての……!!
   っく……! サツキ!!
サツキ 届いた! ブックマーク・ページド 癒本(ゆほん)!!
シュウ ッ……!!

シュウ(モノローグ) ガキの頃から、言ってることが分からないと言われ続けた

   俺が好きだと思うこと、ワクワクするもの
   その価値も、輝きも、誰にも通じなかった

   速く走るバイク、みたいに、誰にでも伝わるものが好きだったら良かったのに
   普通の人と同じ感覚を持てたなら良かったのに

   本の知識だけが、俺を排斥しなかった
   本だけが、俺のそばにあった

シュウ ……俺、は……ただ……当たり前に……普通に、生きてえだけなんだよ……
   排斥、するぐらいなら、最初から、ほっといてくれ……

サツキ きっと僕と君の事情は違うだろうけど
   放っておかれたい気持ちは……少しだけ、分かる気がするよ
   でも今は落ち着いて……ここに、留まって……
シュウ ぅ……
タケル よし、大人しくなった!
カナメ ということは事態は落ち着きましたか
   残念です
タケル もうアンタ黙ってろ、ホント殴るぞ

サツキ とにかく、みんな無事で良かった……
出会ったばかりで、失うなんて……辛すぎるからね
タケル ……アンタ、やっぱり過去に何かあったんだな?
サツキ アラサーにもなれば、色々とね。でも、今はそれより……

サツキ 見てるだろ、キュレーターここからもう事態は動かないよ
   僕らを元の場所に戻して
キュレ いやぁ、お見事お見事。想定よりかなりお早い解決でしたね
   では、お望み通り、元の場所まで回収しましょう
サツキ また、風が……っ!
   う、うわぁあああ!!


(少し間を空ける)


キュレ お帰りなさい、みなさん
   ご気分はいかがです?
タケル ……テメェ……ホント、一発くらすぞ
サツキ タケルくん、落ち着いて……

キュレ 想定とは少々異なりましたが……
   トウカさんとシュウさんも、そろそろ正気に戻ったでしょう
   いかがです? あなたがたの傷、よく思い出せましたか?

シュウ イヤなこと、たっぷり思い出した。これが何のためになる?
トウカ ……僕に、発破をかけるために……こんなことを?
キュレ えぇ、トウカさんのおっしゃるとおりです

キュレ この傷を、治すため……あなたたちの人生を書き直すため……
   あなた方には、戦っていただきたいのですよ
   本当は皆さんに思い出していただきたかったのですが
   それはまたの機会ということにいたしましょう

キュレ それにしても感心しました
   咄嗟の状況でも支え合い、仲間を助け合う皆さんの姿……
   実にお見事です
タケル まさかこれがチュートリアルでした、ってんじゃねぇだろうな
キュレ おや、何か問題でも?
サツキ まったく、冗談じゃない……
キュレ ですが、良い絆は育めたはずです。
   共に難所を越えた人々には、彼らならではの絆が生まれますからね

サツキ (絆、か……
    失ってしまうものが、増えてしまうのは怖いけど……
    ううん。今度こそ、失わないって決めたんだ)

カナメ キュレーターさんが信用ならない以上、仲間は多いに越したことはありません
   こうして出会えたことですしこれから皆さんどうぞ、よろしくお願いしますね
トウカ あ……
   よ、よろしくお願いします
シュウ ん
タケル お前はホントどの面下げて……まぁいいか。よろしくな
サツキ ……そうだね
   新しい縁も、きっと悪くない
   よろしくね、みんな


終 




作:佐久田 葉

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