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【#茶円アキラ生誕祭2026】スーパーパワフルライトウェイトバッテリー 2026.09.14 【#茶円アキラ生誕祭2026】スーパーパワフルライトウェイトバッテリー

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「アキラの欲しいもん、何か知らねえか」
 直球で尋ねると、電話越しのユウヤは
「まぁそら、知らんこともないけど?」
 と即答した。

「最近南国料理凝ったはるみたいで。ナンプラーの味比べしとるて言っとったから、買うたったら喜ぶんちゃう?」
「ナンプラーって?」
「タイかどっかの調味料」

「うーん……」
 あんまりピンと来なかった。

 アキラは雑学王で、大概のことは解説できるレベルで知っている。
 その興味の幅は大したものなのだが、大概の物事に対して短期集中型なので、誕生日の頃にはもうナンプラーにハマっていたことなど遠い過去のエピソードになってしまっているだろう。

「……なんかもう少し、長期的なもん」
「誕生日プレゼント考えとるんやったら、まぁ日用品ぐらいが無難なんちゃう?」
 サクッと見透かされて、ぐぅの音も出ない。

「……アイツの日用って、そもそも想像つかねぇんだよな……」
 とこぼすと、
「えー、そないでもないけど」
 ラジオのリスナーは、さらりと答える。

「大体ラジオ局で仕事して、空いとる時間にローカル番組の収録行って、土日は商店街とか地元のイベントで進行役して……まぁ、地元に根ざしてよー頑張ったはると思うけど」
「……ほん」

「あとブログ書いたはるわ。ドラマの感想とか飯の感想とか、あとエッセイっぽい内容とかいろいろやねんけど。それ読む限りは、まぁよぉ出歩いたはるね」

 喉元まで「お前結構本気でアキラ推してるよな?」と言葉が出そうになるが、そんなこというと猫パンチが飛んでくるに決まってるので、黙っておく。

「……参考になった。ありがとな」
「別に。たまにラジオ聞いて知ったぐらいの話やけど。またなんかあったら」

 どのへんが「たま」なのかは置いておくことにする。

「ちなみにお前、何贈る?」
「書」
「あぁ……」

 俺の誕生日の時は『安全第一』と書かれたステッカー付きのヘルメットをもらった。

 バイクを運転するときに、当然意識に持っておくべき信念とはいえ、改めて目にすると気が引き締まる思いがする。

「アレ役に立ってる。いいよな」
「えッ」

 言葉が一瞬短く切れた。
 音声の不調かと思ったが、そうでもないらしい。

「…………………………………………ほな」

 たっぷりの沈黙の後、ユウヤが唐突に電話を切った。

 何かまた地雷でも踏んだのか、単に褒められたのが衝撃だったのか。
 ユウヤがキュウリを見た猫のように縦に飛ぶのはよくあることなので、あまり気にしないことにする。

(俺も聞き直すかな。アキラのラジオ……)

 普段から一応、放送時間にはアキラのラジオを流すようにはしていた。

 ただ、作業に没頭していると、ついつい耳が離れてしまう。
 気が付いたら話題が終わって、エンディングトークの流れに入っているなんてのがしょっちゅうで、内容は多分ユウヤほど頭に入っていない。

 今日も元気そうに喋ってるなぁ、と感じておしまいになりがちで、リスナーとしての熱心度には正直あんまり自信がない。

(真面目に聞いてみるか……)
 と思い、ラジオアプリを開いた。
 バックナンバーが配信されていて、過去の放送日に遡って内容が聞ける。

 再生ボタンを押すと、朗らかなアキラの声が流れ始めた。
 直近の市内のイベントの紹介から始まり、最近食べた食事の話、読み終わった本の紹介、見に行った映画の話、仕事先で起きたちょっとした出来事、などなど、アキラの日常が垣間見えるトークがテンポ良く繰り広げられる。

(あー、ダメだコレ。ぼーっと聞いちまう)

 いつも作業用BGMにしているせいで、ついつい手が工具に伸びそうになるのを押さえる。

 アキラを通じて見る大阪の町並みは、彩り鮮やかで、あたたかかった。
 何気ない小さな店や、ちょっとしたモニュメント。
 自分で行っても気付けないようなさりげないポイントに、アキラは愛着を抱いていたし、いろんなところに魅力を見出していた。

(前もそんな感じだったな……)

 春先に、アキラとユウヤと3人で歩いた大阪のことを思い出す。
 アキラはスマホの地図に頼ることなくすいすいと道を歩いて、店の推しポイントを楽しげに語ってくれた。
 当時は率直に、歩くガイドブックだな、と思ったが、今思い返せば、あれはアキラらしい愛情に裏打ちされた時間だったように思う。

 何も知らない大阪の土地なのに、まるで古くから知っていたような愛着を感じられて、大阪の街が少し好きになれた。

(アレ、そういやあの時……なんか『これいいな』って思ったんだよな……)

 こめかみをぐりぐりと押さえて、当時の会話を思い出そうとする。

 確か、夜にさしかかった頃だった。

 最後に入った店で、ユウヤがテーブルに突っ伏して
「もう足くたくたやわ、一歩も歩かれへん」
 と呻いた。

 それに対して、アキラが苦笑しつつ、何かを言ったのだ。

(そうだ……。それ聞いて『あー、こういうもん作ったらアキラの役に立ちそうだな』って思った気が……)

 思考を深く沈めていく。
 当時の光景を思い返し、一日の終わりに何があったかを蘇らせていく。

(アキラもあの日は、詰め込みすぎたっつってたし、結構バテてて……。でも、これだけ歩いたあと食べる飯は美味いって話になって、で……)

 アキラが、最後に集合写真を撮ろうとして。

「あ、スマホ」

 唐突に思い出した。

 アキラは、よく写真を撮っていた。
 ブログに使う他にも、その日何があったかを思い出すために、何気ないことでも写真に撮るクセがあるのだという。

 他にも、タイムスケジュールの確認をしたり、アクティビティの予約を証明したり、ユウヤやシュウの帰りの便の運行状況をチェックしたりなどなど、アキラはなんだかんだスマホをよく使っていた。

 それで、最後の店で写真を撮ろうとした時には、スマホのバッテリーが切れていた。

 アキラは
『今日、楽しすぎたからしゃあないか』
 と、苦笑して、写真を撮るのを諦めていた。

(思い出した。あの時、スマホの充電器作ってやったらいいなって思ったんだったっけ……。一日中持ち運んでも疲れないような軽さで、でも、何度でも充電できるようなやつ……)

 思い出せれば、あとは早い。

(アキラはあまり荷物持ち歩かねえようにしてたから、邪魔しねえよう、極力小型で……。でも、バッテリーとしては長持ちするように)

(PESの取得まではしねぇけど、知り合いに頼んで技術基準に適合してるかは試験してもらって……)

(あとは……)

 採算度外視で作って良いのなら、ありったけの技術を詰め込める。
 そう考えると、少し胸が躍った。

 さっそく設計図を起こしていく。
 鉛筆を動かすうち、大阪を歩くアキラの姿が頭に浮かんだ。

 大阪の街を、元気いっぱいに闊歩するアキラが、その足を止めないよう。
 彼が残したいと思った思い出が、いつまでも鮮やかに残るよう。

(いいものを、作ろう)

 紙に定規を当てて、まっすぐに、線を引いた。




著:佐久田葉
イラスト:青猫
書:久保田さらら

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